団扇の原型は古墳時代に中国から渡来した翳(さしば)というもので、
団扇の柄(え)を伸ばしたような形をしていました。
10世紀ごろに小型の翳を団扇と呼ぶようになります。
扇ぐことにも使われていましたが、主に公家・役人・僧侶の間で威厳を
正す為に顔を隠したり、虫を払う道具として使われていました。
竹と和紙でできた団扇は、室町時代末期に製造が始まり、送風の能力が
大幅に上がりました。
団扇の歴史は、その意匠(形状、材質、構造)ならびに機能・用途、
意味・意義、背景・時代の特徴からみて、主に5つの時代に分類出来る。
古来、団扇は木製品、鳥毛や獣毛、蒲葵(びろう)や芭蕉の葉に始まり、
もっと大型で「あおぐ」ためより「はらう」「かざす」ためのもので、
威儀、儀式、縁起、祈願、軍配、行司、信仰、占いなどにつかわれた。
その後、形態や材質は時代によって変化してゆき、室町時代末期、
軽くて扇部がへたらない構造として町民文化が花開くとともに涼や炊事、
装いや流行、蛍や虫追いなど、さまざまな場面で利用された。
明治時代には、その美しい図柄の団扇は外国人に高い評価を得て盛んに
外国に輸出された。
商家の配布用としての需要も急増し、裏面に名入れ、表面には商品や
様々なメッセージが織り込まれ、広告媒体としての意義を備えていった。
昭和40年代以降、扇風機やクーラー、ガスや電気のコンロの普及など、
生活環境の著しい変化により実用面は縮小するものの、夏場を中心に
涼をとる生活の道具、花火大会など日本の風情を楽しむおしゃれの小道具、
炊事の道具、広告の媒体としての利用は今も盛んである。
そして、竹団扇を手作りをはるかに上回る生産性と低コストから、
伝統的な竹に換わってポリプロピレン(プラスチック)を使用した
ポリ団扇が登場し、急速に普及していく。
しかし、ポリ団扇に比べ、心地よい軽さで手になじみ、
手作りの風をうみだす竹団扇は現代においても優しい涼しさを生み、
古きよき時代が思い出させる風情のあるものです。
近年、需要がポリ団扇に変わりつつある中で、エコを掲げる現代において、竹団扇は本物のエコ商品として再度見直されるだろうと思われます。 |